シンガポールの好況を表すいくつかの指標(3)

Posted on 8月 4th, 2008 by SEEBRA.
Categories: etc, Sciety.

ささっと、シリーズ第3弾。

今回まず取り上げるのは、
『政治腐敗認識指数』。
これは政治や行政において、汚職などの腐敗がどれくらい少ないと思われるかを表す数値だ。

シンガポールは、世界的に見てもこうした腐敗が少ない国と見られている。
国際的に汚職や政治腐敗を監視するNGO、
Transparency International(TI)による2007年度の報告では、
政治・行政がクリーンな国として世界第4位にランキングされている。

◆腐敗認識指数(Corruption Perception Index) [2007,TI]

順位  国名
1  デンマーク
1  フィンランド
1  ニュージーランド
4  シンガポール
4  スウェーデン
6  アイスランド
7  オランダ
7  スイス
9  カナダ
9  ノルウェー
・・・
17 日本

全ランキング(PDFファイル)はこちらから。
(ちなみに日本以外のG8諸国ではイタリアの41位が飛びぬけて最低)

確かに、この国の政治・行政のあり方を見ていると、国会議員含め各公務員の職務に対する使命感は日本に比べ、非常に高いと感じる。
シンガポールの政治は人民行動党(PAP)による実質一党独裁体制だが、リー・クアンユーによって独立当初から進められた徹底的な汚職追放政策によって、メンタル、そしてシステムの面からも、非常に志の高い姿勢が貫かれている。

経済指標からは少し脱線するが、何といってもシンガポールには「汚職防止法」という法律と、それを専門に取り扱う「汚職査察局」という独立した機関があるのだ。これによって、シンガポールではいわゆる接待行為が全て禁止されている。その取り組みの体制も厳しく、特徴的なものとしては以下のような点がある。

・疑わしきは罰する
汚職の嫌疑を受けたもの(資産に著しい増加が見られた場合など)は当局の査察を能動的に受け、その理由を明確に説明できなかった場合には賄賂の確証がなくとも有罪となる(ちなみに、日本にも国会議員に資産公開の義務などはあるが、これは虚偽の申告をしても罰則はない)。

・賄賂提供者の逮捕義務
賄賂の提供を受けたものは、その提供者を逮捕しなければならない義務を負い、理由なく逮捕しなかった場合には自分自身も有罪となる。

・役職の高いものほど罪が重い
1975年に当時の国務大臣が収賄に関わった事件では、4年あまりの実刑判決が下された(日本のように、大臣であっても辞職して終わりということなどありえない)。

・・等々、
自らも平然と天下りしてしまう日本の会計検査院などとは大違いである。
また、それに見合った待遇というものももちろんあり、成果主義によって若くても有能な職員には役職を超えて、しかるべき公務員報酬が支払われる。逆に、成果が見劣る場合に対してももちろん厳しく、例えば中央積立基金(年金に相当)の運用担当者は、在職中の運用実績が出せなかった場合は退職金ゼロとなる。
日本の社会保険庁のように、「年金記録を5千万件失くした」などといっても何の処罰もないことは、シンガポール人には考えられないことなのだ。


また、こうした姿勢は、公的予算を使った国家プロジェクトの進行においても大いに発揮される。
例えば前回に触れた国内のIT化推進については、過去に以下のような国家プロジェクトを順次実行してきている。

・1980-1985 国家コンピューター化計画
         (The National Computerisation Plan)

・1986-1991 国家IT計画 (The National IT Plan)

・1992-1999 IT2000

・2000-2003 Infocomm 21

・2003-2006 Connected Singapore

そして現在は2015年へ向けた10ヵ年計画として、
Intelligent Nation 2015』(iN2015)
というプロジェクトが進行中だ。

また、シンガポールの良いところは、このような計画がなされた場合に、常に明確な数値目標や戦略を盛り込んだマスタープランがその都度しっかりと策定され、それが国民に開示されてちゃんと理解を得られるようなシステムになっていること。
しかも、それらプロジェクトをことごとく前倒しで完了させ、すぐにまた次のより高度な計画へとステップアップしていくさまは、ビジネスとしても学ぶべき点が非常に多い。正に「企業国家」の表れだ。
重ね重ねにはなるが、「骨太の方針」だの「5つの安心プラン」だのといった、名前も中身も具体性に欠ける計画をのん気に謳いあげる日本とのあまりの違いに嘆きたくもなる。

戦略立案自体も、産官学が垣根を超えて一体となり、国民の利益の最大化という目標に向けて、私欲を捨てて取り組んでいる様子が伺える。
例えば、iN2015のボードメンバーを見ると、ファイナンスのプロとして外資系銀行の上級幹部や、システム面ではマイクロソフトやヒューレット・パッカードの上級幹部など、民間の優秀なリソースも惜しみなく投入されている。
普通、そんなことをしたら「では、サーバーは全部Windowsで」、などといったことにならないか心配になるが、これらも先の自浄効果で回避されるのだろう。シンガポールが打ち出す、「クリーン&グリーン」の姿勢は見かけだけではないのだ。


また長くなったので今回も一旦この辺で・・。
次回、最終回(おそらく)は、
「10年後、シンガ国民の2人に1人はミリオネア?」をテーマにします。

0 comments.

Leave a comment

Comments can contain some xhtml. Names and emails are required (emails aren't displayed), url's are optional.